あの日のこと

 もう考えるのも思い出すのも嫌だけど、夫が亡くなったあの日、最後に交わした会話、夫が亡くなった瞬間。生命維持装置でかろうじて生きていた夫の機械を外す同意をした。たくさんの管をつけていても、もう持たないってことも分かった。こんな衝撃は今まで経験したことがなくて、家族は、霊安室で夫と二人きりにしてくれた。こんなに早く置いていかないでって夫にすがったけど、もういっぱいいっぱいだった。夫は穏やかな顔をしていた。明日が来ないなんて思ってもいなかった。


 葬儀屋さんが打ち合わせに来た時も着替える余裕なんてなくてずっとパジャマでいた気がする。子供にご飯も作れなくて毎日、コンビニのおにぎりだけ食べていた。痩せてしまった私に父が仕事帰りにお寿司(寿司職人です)を持って来てくれて、父の優しさがありがたかった。銀行に解約の手続きに行けば、退職金などでまとまったお金が入ると知った途端、奥の方から誰かが出て来て、色々勧めてくる。私たちが力になりますと。夫が亡くなってから眠ってないしほとんど食べていないし、具合が悪いんです。お金の話はしたくありませんと言った。悔しくて泣いた。その偉い人は奥の方に戻っていった。


(ちょっと不快な内容があります・・・)



 何もかも忘れたくてお酒を飲んだ。夫のところに行きたかった。毎日が絶望だった。朝起きたら、夫のベルトがクローゼットにかけてあった。私、首を吊ろうとしたんだ。なんて事をしたのか、愕然とした。それから、お酒を飲むことができなくなった。


 もうすぐ夫が亡くなって8ヶ月。生きていることから逃げたくなる日もある。でも今はできるだけ毎日を穏やかに過ごせるように生きている。できるだけ人と話して、話したくないときは音楽を聴いて。夫との18年間の結婚生活は些細な喧嘩もあったけど、出会えたことが幸せだった。今は毎日を何となく過ごして1日が過ぎる。それを繰り返している。もうお正月なんて嫌いだ。お正月を祝うことは多分、これからないと思う。